その痛み、「成長痛」じゃないかも? 中高生アスリートを襲う“骨の悲鳴”と未来を守る方法
「練習を頑張っているんだから、多少の痛みは仕方ない」
「それは『成長痛』だから、そのうち治るよ」
部活動に打ち込むお子さんに対して、そんな風に声をかけてはいませんか?
確かに、成長期には「成長痛」と呼ばれる一過性の痛みもあります。
しかし、特定の場所が 持続的に痛む場合、それは単なる成長の証ではなく、骨が上げている「危険なサイン」、つまり“骨の悲鳴”かもしれません。
特に、体が劇的に変化する中高生の時期は、スポーツパフォーマンスが飛躍的に向上する一方で、骨格系の障害が非常に起こりやすい、デリケートな時期でもあります。
今回は、成長期のアスリートに特有の骨の障害がなぜ起こるのか、その背景にあるオーバーワークやホルモンの問題、そしてお子さんの選手生命と将来の健康を守るために、私たち大人が知っておくべきことについて詳しく解説します。

-なぜ成長期の骨は”危うい”のか?-
まず理解しておきたいのは、成長期の骨は、大人の骨をそのまま小さくしたものではない、ということです。
成長期の骨の端には「骨端線(こったんせん)」と呼ばれる、成長に関わる軟骨の部分があります。
この骨端線は、骨が伸びるための重要な場所ですが、同時に構造的に非常に弱く、力学的なストレスに脆弱です。
例えるなら、まだコンクリートが固まりきっていない建設中のビルのようなもの。この時期に、大人の選手と同じような、あるいはそれ以上の過度な負荷がかかると、この弱い部分にダメージが蓄積し、様々な障害を引き起こしてしまうのです。

-中高生アスリートに多い「骨の警報」-
過度な負荷が成長期の骨にかかり続けると、以下のような代表的な障害が発生しやすくなります。
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腰椎分離症(ようついぶんりしょう): 腰の骨(腰椎)の一部が、体を反ったりひねったりする動作の繰り返しによって疲労骨折してしまう状態です。野球(スイング)、バレーボール(スパイク)、サッカー(キック)など、多くのスポーツで見られます。「腰を反らすと痛い」が続く場合は要注意です。
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疲労骨折(ひろうこっせつ): 一回の大きな力ではなく、ランニングやジャンプなど、小さな力が同じ場所に繰り返し加わることで、骨に微細なひびが入る状態です。「シンスプリント」として知られるすねの痛みも、放置すれば疲労骨折に移行する可能性があり、重要な警告サインです。すねや足の甲に多く見られます。
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オスグッド・シュラッター病: 膝のお皿の下の、すねの骨の出っ張り(脛骨結節)が痛んだり、腫れたり、出っ張りが大きくなったりする、成長期特有のスポーツ障害です。この部分も成長期の弱い軟骨(骨端線)でできており、ジャンプやキック動作で太ももの前の強大な筋肉が繰り返し引っ張ることで、炎症や剥離が起こります。サッカーやバスケットボール、バレーボール選手に多発します。
これらの障害は、選手の「頑張り」の証ではありません。
骨が壊れるスピードに、骨を作るスピードが追いついていないという、明らかな「オーバーワーク」の証拠なのです。
-【特に重要】女子アスリートを支えるために、絶対に知っておくべき健康問題-
女子選手は、男子選手とは異なる、女性特有の生理的な配慮が不可欠です。
特に「痩せている方が有利」といった誤った考えや、過度なトレーニングが、将来にまで影響を及ぼす深刻な健康問題を引き起こすことがあります。
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より広い概念「RED-S」へ
以前から「女性アスリートの三主徴(FAT)」として、①エネルギー不足、②無月経、③骨粗鬆症の関連が指摘されてきました。しかし近年では、この問題をさらに広く捉え、男女両方のアスリートに起こりうる「RED-S(レッズ:スポーツにおける相対的エネルギー不足)」という概念が提唱されています。RED-Sは、骨だけでなく、免疫機能の低下、心血管系への影響、精神面の不安定さなど、パフォーマンスに関わるあらゆる側面に悪影響を及ぼすことが分かっています。 -
問題の根源:「利用可能エネルギー不足」
RED-Sや三主徴の根本的な原因が、このエネルギー不足です。これは、トレーニングによる莫大な消費カロリーに対し、食事からの摂取カロリーが慢性的に足りていない状態を指します。意図的な食事制限だけでなく、「しっかり食べているつもりでも、練習量が多すぎて追いついていない」という無自覚なケースも非常に多いのが特徴です。 -
健康のバロメーター:「月経」の重要性
エネルギー不足が続くと、脳の司令塔の機能が低下し、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が止まり、月経が不順になったり、止まってしまったりします(無月経)。 「激しい運動を頑張っているから月経が来ないのは、当たり前」というのは、最も危険な誤解です。 月経は、女性アスリートにとって「健康のバロメーター」。月経が止まるということは、体が「今は妊娠・出産に耐えられない」というSOSを発している状態であり、骨の健康にとっては極めて危険なサインなのです。 -
将来への深刻な影響:「骨の貯金=貯骨」ができない
骨の健康に不可欠な女性ホルモン(エストロゲン)が不足すると、骨を作る働きが著しく低下します。人の骨量は10代後半から20歳頃にピークを迎えますが、この一生分の「骨の貯金=貯骨」ができる最も大切な時期に無月経の状態にあると、貯金ができないばかりか、逆に骨を切り崩してしまい、若くして骨密度が低い状態になります。これは、現在の疲労骨折のリスクを高めるだけでなく、閉経後、同年代の女性よりもはるかに早く、重度の骨粗鬆症になる危険性を抱えることを意味します。
research-center.juntendo.ac.jp
‐選手の未来を守るために、私たち大人ができること‐
では、大切な子どもたちをこれらのリスクから守るために、保護者や指導者は何をすべきでしょうか。
- 「痛み」のサインを軽視しない:
「根性がない」と精神論で片付けず、選手が訴える痛みに真摯に耳を傾け、練習を休ませる勇気を持ちましょう。 - トレーニング量の管理:
休息日を適切に設け、「休みもトレーニングのうち」という考え方を共有しましょう。 - 正しいフォームの指導:
非効率なフォームは、特定の部位に過剰なストレスをかけます。 - 栄養と睡眠の重要性を伝える:
体を作るのは食事であり、回復を促すのは睡眠です。特に、女子選手に対しては、健康的な体とパフォーマンスの関係を伝え、「体重」だけでなく「食事」と「月経」についてオープンに話せる環境づくりが何よりも重要です。 - ためらわずに専門医へ:
痛みが続く場合や、無月経などのサインが見られる場合は、必ず整形外科や婦人科、スポーツドクターなどの専門医を受診させ、正確な診断を受けることが第一です。
‐短期的な勝利よりも、長期的な健康を‐
成長期は、アスリートとして大きく飛躍できる可能性を秘めた、かけがえのない時間です。
しかし同時に、その後の選手生命、ひいては生涯にわたる健康の土台が作られる、非常にデリケートな時期でもあります。
目先の勝利を追い求めるあまり、オーバーワークで選手の未来を潰してしまうことほど、悲しいことはありません。
私たち大人が正しい知識を持ち、選手の体の声に耳を傾け、時には勇気を持って休ませること。
そして、体の使い方やコンディショニングについて、専門的なサポートを検討することも、選手の可能性を最大限に引き出す一つの方法です。
選手の未来を守るために、今一度、日々のトレーニングのあり方を見直してみませんか?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
それでは皆さん良い一日を。
Have a nice day!
執筆:ごっちゃん(Purple Edge Kochiスタッフ)